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2025.03.14計測器

クリーンルームの評価

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適格性評価(クオリフィケーション)

このページでは、医薬品製造(製薬),医療機器や食品製造などでの適切な作業環境の実現のために使用されるクリーンルームについて、クリーンルームに関する設備の稼動原理から、適格性評価の実態・実験データ、関連規格など、適格性評価業務としてお客様のバリデーションに現場作業で関わる当社ならではの情報を交えてお届けします。

  1. クリーンルームの評価(性能)を実現している機器の構成(仕組み)
  2. クリーンルームの評価の実態(適格性評価・測定の必要性)
  3. クリーンルームの評価(適格性評価・測定)の項目例
  4. クリーンルームの評価に関連する規格の情報

1.クリーンルームの評価(性能)を実現している機器の構成(仕組み)

  • クリーンルームの性能は「微粒子を捕集するフィルタや送風するファン」だけでは実現出来ません。
  • JISでのクリーンルーム(Clean room)の定義は以下のようになっています。


コンタミネーションコントロールが行われている限られた空間であって、空気中における浮遊微小粒子、浮遊微生物が限定された清浄度レベル以下に管理され、また、その空間に供給される材料、薬品、水などについても要求される浄度が保持され、必要に応じて温度、湿度、圧力などの環境条件についても管理されている空間
(JIS Z 8122 コンタミネーションコントロール用語)

  • 即ち、クリーンルームは、室内の清浄さ(空気中の塵埃・微生物を一定以下にする)以外にも、温度、湿度、圧力など環境条件が制御できることが必要とされます。
  • クリーンルームの性能を実現するための要素は設備規模や用途により様々ですが、一例を以下に示します

各要素の働きと機能

機器名働き・機能
①空気調和装置空気の温度や湿度を調節する
②ファン(給気)室内に空気を押し込む
③給気ダンパー給気風量を調節する。一定風量を保つ為CAV※ が用いられる事がある
④HEPAフィルター気中の塵埃を取り除く
⑤差圧計(フィルタ) フィルタの目詰まり状態の目安とする(目詰まりすると差圧が高くなる)
⑥クリーンルーム空調・清浄化された空気で満たし、外部と隔離する空間
⑦温湿度計室内の温湿度を測定する
⑧差圧計(室圧)室内圧力を測定する
⑨排気ダンパー室内からの排気風量を調節する。室圧を制御するためVAV※ が用いられる事がある
⑩ファン(排気)室内からの空気を排気する
⑪FFU(ファンフィルタユニット)室内の空気の塵埃を取り除いて戻す
  • VAV、CAVとはダンパの一種。風速計とダンパ部の制御装置(モーターなど)が一体になっている。
  • VAV(Valiable Air Volume 可変風量装置)
    一定の室圧や室温に保つ目的に排気側に使われる事がある。
    自動でダンパの開閉を行い風量を可変させるもの。
  • CAV(Constant Air Volume 定風量装置)
    給気量確保のため、給気側に使われる事がある。
    給排気の条件に関わらず一定の風量になるようダンパを調整するもの。

2.クリーンルームの評価の実態(適格性評価・測定の必要性)

  • クリーンルームは、医薬品製造・医療機器製造のほか、食品製造等の様々な工程で用いられています。
  • クリーンルーム内で行う作業は、その特質上、高い清浄度(きれいな空気環境)が求められますが室内の清浄度は室内への出入り、空調の給気量や隣り合う室間の気流、差圧など様々な影響を受けます。
  • そこで、クリーンルームを設計/運用する場面では、用途に適した性能を設備が発揮するよう考慮されますが、様々な要素で成り立っているため、実際に運転した場合の室内の状況は測定しないことには分かりません。
  • ⇒こんな時には、クリーンルームの清浄度が必要なレベルになっているか、あるはその清浄度を維持するために必要な送風量、周辺室との気流関係や差圧(室間差圧)の確認が有効です。

室間の差圧がゼロでも空気が流れていることがある

  • 室間の差圧が無い状態でも、開口部では気流が流れていることがある

測定の状況
 差圧:0Pa
 壁面開口部:幅10cm×高さ6cm
 供給風量:3m3/h

微粒子のミストで気流を確認

気流の状態を見る(可視化)方法の違いで、見え方も大きく変わる

  • 空間の風向きを可視化して確認する手段には幾つか種類があります。
  • 同じ気流でも、手段により見え方は異なります。

同じ運転条件でも開口部の閉止・開放により差圧の値は色々

隣室への製品搬送のため、室間をコンベアが貫通しているような場合、同じ運転条件(差圧設定値)でも、ふらつき具合に大きな違いが見られます。

  • ⇒違いが出ることは感覚的にも分かりますが、実際に測定して比較してみると、、、

測定の状況
 設定値:18Pa
 壁面貫通部(約300×200mm)
 閉止、開放のそれぞれで測定

 測定:1分間隔、1h測定

  • 上記のようなクリーンルーム、清浄環境に関連する実験データ以外にも、バリデーション・適格性評価に関する様々な情報をメールマガジンで毎週木曜日に発信しています!

3.クリーンルームの評価(適格性評価・測定)の項目例

  • クリーンルームの評価に関係する評価項目としては、JIS規格※1 に浮遊微粒子濃度試験(清浄度)、差圧試験
    気流・風速試験、温湿度などが示されています。
    ※1 JIS B9920

4.クリーンルームの評価に関連する規格の情報

  • クリーンルームの評価(評価項目の定義や測定の基準)に関連して、主に以下の規格があります。

    ISO14644-1 クリーンルーム及び関連制御環境-第1部:空気清浄度の分類
    ISO14644-3 クリーンルーム及び関連制御環境-第3部:試験方法
    JIS B9920 クリーンルームの空気清浄度の評価方法
    FED-STD-209  Airbone Particulate Cleanliness Classes in Cleanrooms and Clean Zone
    (クリーンルーム内及びクリーン区域内の空気中浮遊微粒子の清浄度クラス)
  • まず、1963年にFED-STD-209(米国連邦政府規格)が制定されました。
    クラスは1ft3(1立方フィート)中の0.5μmの微粒子数で表され、クラス100=1ft3中に微粒子が100個@0.5μmということになります。 (1ft3=28.3L)
  • 1992年にSI単位への移行(FED-STD-209E)で単位体積が1ft3から1m3になりましたが、1999年のISO 14644-1の制定に伴い、2001年に廃止されました。
  • しかし現在でも清浄度を表す呼称としてクラス100とかクラス1000といった、FED-STD-209の(1ft3基準での)表現が慣例的に使用されています。
  • ISO14644は、総合タイトルが「クリーンルーム及び関連制御環境」といい、空気清浄度のクラス分類、試験の方法などISO14644-1(第1部)から、ISO14644-10(第10部)で構成されている規格です。
  • このうち、空気清浄度のクラス分類はISO14644-1の第1部に記載があり、1999年に制定されました。
    清浄度のクラスはISOクラス1~9で表記されます。
  • JIS B9920は、ISO規格(ISO16466-1:1999)を翻訳したもので、清浄度クラスの分類はISO規格と同じでした。
  • しかし、ISO規格の改訂※に伴いJISB9920の2002年版は現行のISO規格と差異があります。(2017.08現在)
    ※2015年12月にISO14644-1:1999(第1版)が廃止になり、ISO14644-1:2015(第2版)に改訂
  • ■清浄度クラスの上限濃度(個/m3)
    粒径ごとに上限濃度が決められています。
    測定対象の粒径は、クラスが対象にしている粒径範囲から使用者(当社からみるとお客様)と打ち合わせて決定します。
  • 清浄度クラスの分類は、以前はISO規格とJIS規格で同一の内容でしたが、ISO規格の2015年の改訂に伴い低濃度(単位体積辺りの微粒子個数が少ない)の区分は分類が不適切として削除されています。
  • ■最小サンプリング位置の数(測定点数)
    微粒子濃度のサンプリング位置(測定点数)は、クリーンルームの広さにより異なります。
    広い部屋になればなるほど、当然サンプリング位置の数も増えます。
  • ISO規格の改訂により、新旧規格でサンプリング位置の数の求め方が変わっています。
    旧版のISO規格(1版)では、面積(m2)の平方根で求めていました。(=JISB9920:2002)
    改訂により面積に関連づけたサンプリング位置の表から求めるように変更されました。
 
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